修理?解体?り災証明書が復興の鍵!「住宅の応急修理」や「被災者生活再建支援法」など、さまざまな復興支援を活用しよう!

『令和2年7月豪雨』のような大規模な災害では、「災害救助法」や「被災者生活再建支援法」が適用されることがあります。こういった国からの復興支援を受けるためには「り災証明書」が必要です。また、り災証明書は自治体の多くの支援制度でも必要とされる「復興の鍵」とも言えるものです。

被災者復興のための支援制度は、とてもありがたいものですが、書類作成に必要なものや申請方法、証明書がいつ発行されるのかなど、不安に思うことが多くありました。ここでは、り災証明書に関する疑問や、国や自治体の復興支援についてまとめています。

『令和2年7月豪雨』の被害状況などについてはこちら。

この記事の目次

  1. り災証明書と被災証明書
    1. り災証明書について
    2. 被災証明書について
    3. り災証明書と被災証明書の違い
  2. 復興支援について
    1. 災害救助法について
      1. 災害救助法の救助の種類
    2. 住宅の応急修理について
      1. 対象の方・対象の住宅
      2. 応急修理の限度額
      3. 応急修理の対象範囲
      4. 応急修理の必要書類
    3. 被災者生活再建支援法について
      1. 制度の対象となる被災世帯と支援金
      2. 支援金申請時に必要な書類
    4. その他、被災者への支援制度
    5. 見舞金など
    6. 令和2年7月豪雨で被災された事業者の支援について
    7. 令和2年7月豪雨災害が「特定非常災害」に指定
  3. さいごに

り災証明書と被災証明書

「災害救助法の応急修理」や「被災者生活再建支援法」などの復興支援や、各種保険の申請には、被災を証明する「り災証明書/被災証明書」が必要とされることがあります。特に「り災証明書」は被災による被害の程度を証明し、国からの支援を受けるためには必須となる証明書です。

り災証明書について

風水害、地震等の自然災害により、所有する家屋等が被害を受けた場合に「全壊」「大規模半壊」「半壊」「準半壊」「準半壊に至らない(一部損壊)」など被害の程度を証明するものです。
※原則、修繕・解体を行っている途中や工事が済んだあとに「り災証明書」の申請はできません

証明事項
被害の程度
対象物件
専用住宅、併用住宅などの住家
必要書類

被災証明書について

風水害、地震等の自然災害により家屋及び家屋以外の工作物等(物置、カーポートなど)の被災の事実を証明するものです。り災証明とは異なり、被害の程度を証明するものではありません。

証明事項
被災の事実
対象物件
被害程度の判定を必要としない住家・非住家 / 住家・非住家以外の家財、塀・門などの工作物
必要書類

大牟田市では日曜・祝日、近くの公民館にて臨時の申請窓口が開設されました。大牟田市役所の福祉課は混み合っていましたので、臨時受け付けがある場合は、近くの公民館の方が早いかもしれません。

「り災証明」「被災証明」の発行について / 大牟田市ホームページ」から、り災・被災証明書の申請窓口の日程を確認できます。また、被災状況によってはり災届けを出さなくても現地調査が行われる場合もあります(り災証明書の申請は改めて必要です)。

今回、市内でも特に被害が大きく広範囲に及んでいた、みなと校区などの一部地域については、り災証明書の交付申請の有無に関わらず、7月16日から職員が住家を巡回して調査します。その他の地域については、り災証明書の交付申請に基づき順次調査を行います。

今回、7月15日に「県の職員と偽って一般住宅を訪問する不審者事案」が発生しています【注意】家屋調査に関する不審者について / 大牟田市ホームページ)。

現地調査がどのように行われるのか、いつ調査が始まるのかについて、事前に市の公式情報を確認しておきましょう。

り災証明書と被災証明書の違い

正直、り災証明書と被災証明書の「用途の違い」まではよくわかっていません。各保険や支援の申請に必要な書類は、り災証明書ばかりです

大牟田市では被災者を対象に住民票等の証明書交付手数料の免除(「令和2年7月豪雨」により被災された方の住民票等の証明書交付手数料の免除について / 大牟田市ホームページ)を行っていますが、必要書類は被災証明書に限らず、り災証明書を申請中の方も対象です

り災証明書は住家の被害の程度を証明するものですので、自動車の水没などは被災証明書にあたるとされています。しかし、自動車の保険会社さんでは「り災証明書を提出してください」とのことでした。

り災証明書の申請後の現地調査でも、家屋の調査や被害状況を調べられましたが、車の水没状況などは聞かれていません。そもそも、廃車にしてレッカーで運ばれたあとですので写真しかない状態です。

また、災害救助法が適用されるような災害では、日本損害保険協会によって手続きの猶予や、特別措置が実施されることがあります。バイクの自賠責保険解約でも今回の災害が対象となりました。

解約手続きに被災証明書を利用できるとのことでしたが、解約用に郵送されてきた書類にある「り災解約に関する確認書」で代替できるため必須ではありません。被災証明書はり災証明書、もしくはその代替書類でカバーできることがほとんどのようです

被災証明書は被害の事実の有無を証明するためのものです。そのため、り災証明書はまだ届いていませんが、被災証明書は申請から2週間ほどで発行されました。今のところ被災証明書が必須なケースはありませんが、り災証明書よりも早く発行されるため、一緒に申請した方が良いかと思います。

り災証明書の郵送

7月14日に申請手続きをしてから、やっと8月19日にり災証明書が郵送されてきました。内水氾濫のため、現地調査にも時間が必要だったせいか、申請から郵送まで1ヶ月以上かかっています

復興支援について

ご留意いただきたい点

投稿時点でわたしが把握できた情報のまとめですので、あくまでも参考に留めていただくようお願いいたします

変更や追加が行われる可能性もありますので、正式な情報は必ず大牟田市のホームページや、各課・担当さまに確認をお願いいたします

災害発生時には「災害救助法」や「被災者生活再建支援法」などの国からの支援や、市からの復興支援策が講じられることがあります。

災害救助法について

災害救助法の住家被害対応表災害救助法の概要 – 内閣府防災[PDF]

大牟田市は人口100,000~300,000人未満です。また、住家が滅失した世帯の数は、床上浸水した世帯は3世帯をもって滅失した1世帯として扱われます。床上浸水が1,079戸(7月29日時点)の被害があった大牟田市は、これだけでも359世帯以上の住家が滅失した計算です。

大牟田市は7月6日に災害救助法が適用されています(令和2年7月3日からの大雨による災害にかかる災害救助法の適用について【第4報】[PDF])。

災害救助法の救助の種類

  • 避難所の設置
  • 応急仮設住宅の給与
  • 炊き出しその他による食品の給与
  • 飲料水の供給
  • 被服、寝具そのほか生活必需品の給与・貸与
  • 医療・助産
  • 被災者の救出
  • 住宅の応急修理
  • 学用品の給与
  • 埋葬
  • 死体の捜索・処理
  • 障害物の除去

災害救助法の概要 – 内閣府防災[PDF]

住宅の応急修理について

災害救助法の救助支援に含まれる「住宅の応急修理」は、災害によってそのままでは居住できず、資力に乏しい場合に被災者を支援する制度です。応急修理の対象であれば、必要最小限の修理を行なうことができます。

対象の方・対象の住宅

「現に居住していた住宅が大規模半壊、半壊又は準半壊」かつ「応急修理を行うことによって、避難所等への避難を要しなくなると見込まれること」が条件とされています。

さらに、半壊または準半壊の場合は「自らの資力では、応急修理をすることができない者(世帯)であること」が条件に加えられます。

応急修理の限度額

  • 大規模半壊又は半壊の場合:1世帯当たり595,000円(税込)上限
  • 準半壊の場合:1世帯当たり300,000円(税込)上限

※同一住家(1戸)に2以上の世帯が居住している場合にも1世帯あたりの額以内です
※対象外となる修理費用や限度額を超える部分の費用は自己負担です

応急修理の対象範囲

日常生活に必要で欠くことのできない部分の破損箇所、かつ緊急に応急修理を行うことが適当な箇所を対象としています。

  • 対象部分の工事を市が修理費用を直接業者に支払います。(現物支給)
  • 災害による被害と直接関係ある修理のみが対象です。
  • 内装に関するものは、原則として対象外です。
  • 修理の方法は、代替措置でも可能です。例えば柱の応急修理が不可能な場合に壁を新設することもできます。
  • 家電製品は、対象外です。
  • エアコンの室外機、カーポート、物置など住宅の外に設置されたものは、対象外です。
  • 洗浄・消毒は、対象外です。
  • 申込前に修理が完了し支払いの済んでいる方は市へご相談ください。

令和2年7月豪雨災害における被災した住宅の応急修理のご案内 / 大牟田市ホームページ

その他、応急修理についての疑問や対象については『災害救助法による住宅の応急修理に関するQ&Aの送付について[PDF]』が参考になります。

例えば、家電製品含むエアコンの室外機は応急修理の対象外(質問7-2の項)ですが、給湯器の室外機は災害救助法の応急修理に該当します(質問19の項)。自宅も給湯器が壊れてしまったので、2週間ほどは水シャワーで過ごしました。

夏だからこそできたことですね。コロナ禍の現状では銭湯も気が進みませんし、お湯がでないのは精神的にもつらいです。なんとかケトルでお湯を沸かして、水シャワーと少ないお湯で乗り切りました。

ありがとう、タイガー魔法瓶……。

応急修理の必要書類

  1. 住宅の応急修理申込書
  2. り災証明書の写し
  3. 施工前の被害状況が分かる写真
  4. 修理見積書
  5. 修理見積内訳書
  6. 資力に関する申出書
  7. 支援金申請書
    ※本人確認書類(写し)及び振込先口座確認書類(写し)を添付してください。
  8. 委任状((7)を代理申請する場合のみ提出)

※(4)及び(5)については後日提出可

応急修理の対象条件や、必要書類をみて疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。

そうです、り災証明書がまだ発行されていません7月14日に申請してから、現地調査を経て、8月19日にり災証明書が郵送されてきました。つまり、1ヶ月ほどは大規模半壊や半壊などの判定も正式にわからないということです。大規模な災害の場合、り災証明書が応急修理の申請に必要なのは無理があると思います

大牟田市の建築住宅課に問い合わせたところ、「応急修理申請前にも修理は可能」とのこと。

応急修理は、申込者と施工業者を市が仲介するような支援方法です。り災証明書が発行されていない段階で修理を依頼する場合には、施工業者が作成した「(3)施工前の被害状況が分かる写真」「(4)修理見積書」「(5)修理見積内訳書」を持参し、「事前に申込者と施工業者で市に相談に来てください」とのことです。

その後、り災証明書が発行されてから、再度正式な申請を行います

また、『災害救助法の概要 – 内閣府防災[PDF](37P・38P)』に応急修理の救助期間について「災害発生の日から1か月以内に完了」とあります。

まずこれも無理なので、あわせて問い合わせしました。正式には発表されていませんが、まず特別基準により延長されるとのことです。

災害救助法による住宅の応急修理に関するQ&Aの送付について[PDF](8-2)』にもあるように、こういった大規模な災害では、被災者の最後の一人が応急修理を完了するまで延長されるようですね。

被災者生活再建支援法について

災害救助法施行令 別表第1(第1号関係)被災者生活再建支援制度の概要[PDF]

大牟田市は『被災者生活再建支援制度の概要[PDF]』の「被災者生活再建支援制度の対象となる自然災害」にある「①災害救助法の適用基準(災害救助法施行令第1条第1項)のうち1号(又は2号)を満たす自然災害が発生した市町村」に該当します。第1号の表は災害救助法の施行令ですので、少なくとも災害救助法が適用された市町村は、被災者生活再建支援法も適用されるようです。

大牟田市は7月22日に被災者生活再建支援法の適用が正式に決まりました(令和2年7月豪雨による災害に係る被災者生活再建支援法の適用団体一覧[PDF])。

制度の対象となる被災世帯と支援金

被災者生活再建支援法被災者生活再建支援制度の概要[PDF]

① 全壊
住宅が「全壊」した世帯
② 解体
住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③ 長期避難
災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④ 大規模半壊
住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)

※申請期間は『基礎支援金』が災害発生日から13ヶ月以内(令和3年8月5日)、『加算支援金』が37ヶ月以内(令和5年8月7日)と定められています

基本的に半壊では、被災者生活再建支援法の支援を受けられませんが、②にあるように解体する場合には半壊や大規模半壊も「みなし全壊」という扱いで、全壊と同じ支援を受けられます。

半壊の場合は、解体を除いて被災者生活再建支援法の支援対象とはなりませんが、半壊の範囲となる「損害割合20%以上~40%未満」の区分は幅が大きく、特に損害割合30%台の被災者の補修費の負担が厳しいものとなっています。

そのため、政府は半壊のなかでも被害の大きい、損害割合30%以上~40%未満を対象に、支援制度を拡充する方針を固めました「半壊」世帯の一部にも支援金 政府検討、最大100万円 :日本経済新聞)。

改正法が適用

2020年12月4日、被災者生活再建支援法の一部を改正する法律の施行に伴い、中規模半壊(損害割合30%台)が追加され、令和2年7月豪雨で被災した世帯にも遡及適用されることとなりました。
令和2年7月豪雨災害に係る被災者生活再建支援制度についてのご案内 – 福岡県庁ホームページ

支援金申請時に必要な書類

基礎支援金の場合
全壊 / 大規模半壊
(1) 支援金支給申請書
(2) り災証明書
(3) 世帯全員の住民票
(4) 振込口座の通帳の写し
解体:半壊
(5) 滅失登記簿謄本
解体:敷地被害
(6) 敷地被害証明書類
加算支援金の場合
(1) 支援金支給申請書
(7) 契約書等の写し
(8) 本人確認書類(免許証、健康保険証の写し)

参考:「被災者生活再建支援金」について / 大牟田市ホームページ

住宅の応急修理や被災者生活再建支援法において、一部損壊・半壊・大規模半壊・全壊など、損害判定が非常に重要なことがわかります。特に、解体を除く半壊以下では、被災者生活再建支援法の支援はありません。

この問題は政府でも議論され、内閣府も法改正の方針で進めていますが、実際に今の方針通りになるかはわかりません。

損害判定を決める被害認定フローは災害の種類(地震/風害/水害)や規模(水害の場合は決壊や濁流による外的損壊の有無)、家屋の作り(木造/鉄筋)などによって調査内容や判定基準が異なります。

調査内容は内閣府によって定められているものの、ある程度は自治体の判断に委ねられていることも多いように思います。こちらからも判定内容が正しいかどうかを判断できるようにしておいた方が賢明です。

被害認定フローの詳細はこちら。

その他、被災者への支援制度

見舞金など

参考:被災者支援制度一覧 – 大牟田市[PDF](リンク切れ)

令和2年7月豪雨で被災された事業者の支援について

災害復旧等に向けた補助制度(主なもの)
(1)なりわい再建補助金(新グループ補助金)
(2)被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)

国・県が実施する「なりわい再建補助金」及び「被災小規模事業者再建事業」に対し、大牟田市の独自の上乗せ補助も行われます

金融支援
(1)日本政策金融公庫等による資金繰り支援
(2)信用保証による資金繰り支援
セーフティネット保証4号の適用(セーフティネット保証4号について

大牟田商工会議所では、相談窓口を開設しています(大牟田市豪雨災害に関する経営特別相談窓口を開設しています – 大牟田商工会議所)。

参考:令和2年7月豪雨で被災された事業者の支援について / 大牟田市ホームページ

令和2年7月豪雨災害が「特定非常災害」に指定

令和2年7月豪雨災害が「特定非常災害」指定されたことで、さまざまな手続きが延長されています令和2年7月豪雨災害が「特定非常災害」に指定されました / 大牟田市ホームページ)。

  • 運転免許のような許認可等の存続期間(有効期間)の延長
  • 各種届出などの法令上の義務を履行できない場合の免責期限が設定
  • 法人に係る破産手続開始の決定が留保
  • 相続放棄等の熟慮期間が延長
  • 民事調停の申立手数料が免除

家屋の片付けや、り災証明書の申請手続きに追われて、免許の更新に時間を割けないこともあるかと思います。

運転免許のような許認可等について、令和2年7月3日(金)以後に満了する許認可等を対象に、存続期間(有効期間)が最長で令和2年12月28日(月)まで延長されます

各種手続きの期限が迫っている方は延長対象なのか一度確認をしてみてはいかがでしょうか。

参考:被災者のみなさまへ[PDF]

さいごに

大規模な災害では、り災証明書の損害判定に応じて「住宅の応急修理」や「被災者生活再建法」、自治体からの見舞金などの支援を受けることができます。また、税金の免除や各種手続きの期間延長、事業者に対しての支援などの措置も実施されます。

しかし、床上浸水による損害は想像以上に大きく、住宅の修理費用だけでも数百万、建て替えとなるとさらに費用がかさみます。国や自治体の支援だけでは、すべてを補填することは厳しいと言えるでしょう。今回のような浸水被害があったときに、修理や避難時の費用をどうするのか、保険について精査しておくことも大切です。

自然災害の保険についてはこちら。


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更新履歴

2020年12月7日
12月4日、被災者生活再建支援法の改正法が遡及適用されました。

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