水害時の被害認定フローは複雑?被害を適切に認定してもらうために知っておきたいこと

被害状況を把握し、り災証明書を発行するために現地調査が行われます。第1次調査、第2次調査がありますが、適切な判定をくだしてもらうためにも、ある程度の調査内容を把握しておいた方が安心です。

『令和2年7月豪雨』の被害状況などについてはこちら。

この記事の目次

  1. 準半壊・半壊・大規模半壊・全壊の基準
    1. 被害認定フローについて
    2. 第1次調査と第2次調査の判定結果はどちらが優先される?
  2. さいごに

準半壊・半壊・大規模半壊・全壊の基準

最新の情報のご確認を

調査の実施方法や判定基準などは改定されることがあります。被害認定に関する最新情報は「災害に係る住家の被害認定 : 防災情報のページ – 内閣府」をご確認ください。

津波、越流、堤防決壊等水流や泥流、瓦礫等の衝突などの外力による損傷があり、床上1.8m以上の浸水が一見して明らかな区域などを除き、基本的に現地調査によって被害認定が行われます。また、地震・水害・風害によっても被害認定フローが異なります。以下は水害の被害認定フローです。

被害認定フローについて

水害の被害認定フローの概要住家の被害認定調査〈水害による被害〉【木造・プレハブ】【令和 2年3月】(1分20秒あたり)

階高や構造、外力による損傷の有無によって調査フローが異なります

戸建ての1~2階建ての木造・プレハブ構造の場合
第1次調査が行われ、判定内容によって第2次調査に移行します。また、第1次調査で外観による判定が行われることは共通ですが、外力による損傷の有無によって第1次調査の被害認定フローが異なります
戸建て3階建てなどの場合
外力による損傷の有無に関わらず、第二次調査から行われます。
鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの非木造の場合
非木造用の調査フローに従った調査が行われます。

以下「1~2階建ての木造・プレハブ構造」を例に第1次調査/第2次調査をみていきます。

外力による損傷が見られる場合

外観による全壊判定が行われ、該当しない場合に浸水深による判定に移行します。

外力による損傷がある場合の第1次調査住家の被害認定調査〈水害による被害〉【木造・プレハブ】【令和 2年3月】(6分12秒あたり)

外力による損傷が見られる場合、第1次調査の浸水深の調査においては、浸水深の最も浅い部分で測定されます。

外力に損傷がある場合の浸水深による判定第2編 水害による被害[PDF]

住家の損壊基準(外力による損傷が見られる場合)は以下の通りです。

全壊
床上1.8m以上の浸水

大規模半壊

床上1m以上1.8m未満の浸水
半壊
床上1m未満の浸水
準半壊に至らない(一部損壊)
床下浸水

外力による損傷がある場合の第2次調査災害に係る住家の被害認定基準運用指針[PDF]

被災者から申請があった場合に第2次調査が行われます。

外力による一定以上の損傷がない場合

外力による一定以上の損傷がない場合も同様に、第1次調査では外観による全壊判定が行われ、該当しない場合に浸水深による判定に移行します。

外力による損傷がない場合の浸水深による判定住家の被害認定調査〈水害による被害〉【木造・プレハブ】【令和 2年3月】(7分30秒あたり)

外力による一定以上の損傷がない場合、第1次調査の浸水深の調査においては、浸水深の最も深い部分で測定されます。外力による損傷が見られる場合とは、測定箇所が異なりますので注意が必要です

外力による損傷がない場合の第1次調査災害に係る住家の被害認定基準運用指針[PDF]

外力による一定以上の損傷が見られない場合、床下浸水は「準半壊に至らない」とされ、第2次調査は行われません。

判定基準の改定

災害に係る住家の被害認定基準運用指針【平成30年3月】[PDF]』では外力による一定以上の損傷がなく、床上浸水30cm未満の場合は「半壊に至らない」と判定されていましたが、『災害に係る住家の被害認定基準運用指針【令和2年3月】[PDF]』では床上浸水であれば第2次調査が行われるように改定されています。
災害に係る住家の被害認定基準運用指針【令和2年3月】:改定概要[PDF]

外力による損傷がない場合の第2次調査災害に係る住家の被害認定基準運用指針[PDF]

第1次調査で外観による判定に該当せず、床上浸水している場合に第2次調査に移行します。

道連れ工事住家の被害認定調査〈水害による被害〉【木造・プレハブ】【令和 2年3月】(9分17秒あたり)

第2次調査の内容によって、損害割合が決まり、半壊や大規模半壊などの判定がなされます。

第2次調査の実施方法は地震の場合と同様されていますが、水害では「道連れ工事」という考え方が取り入れられています。損傷した部位以外でも、吸水した断熱材の交換や、床下の汚泥の除去にともなう壁や床の取り外しは、損傷したものとして扱われます。

第1次調査と第2次調査の判定結果はどちらが優先される?

浸水深や外観調査で判定される第1次調査と、細かく家屋内部まで調査される第2次調査では調査方法が異なります。当然、判定結果が異なることがあります。調査結果は「どちらが優先されるか」「判定が軽くなることはないか」というのは気になりますよね。

実は、どちらの調査結果を優先するかについては決められていません。自治体の判断にまかされていて、第2次調査(再調査)を依頼した場合、判定が重い方を優先する市もあれば、第2次調査が優先される市もあります。なかにははっきりと「第2次調査は調査方法が異なるため、判定が軽くなる場合がある」と明示されている市もあります。

第2次調査や再調査には時間もかかりますし、判定結果が決まらなければ復興支援の手続きもできません。調査の時間と判定が軽くなる可能性を考えると、調査依頼を断念せざるを得ないことがほとんどではないでしょうか。やや不親切に思える対応ですが、そうとも言い切れません。熊本市のように「判定結果の重い方を優先する」と明言したことで調査依頼が殺到し、結果的に支援が遅れてしまった例もあります。

第2次調査では細かな調査が行われるため、1回の調査で3時間ほど費やすという話も。大規模な災害で数千戸の家屋が被災した場合、膨大な調査時間が必要になるでしょう。

支援のスピードを重視するのか、それともできる限り正確な判定を重視するのか、自治体の判断も難しいのかもしれません。

さいごに

実際には住める状況にない家屋でも、第1次調査では外観からの判定で軽い判定がなされてしまう事例もあります。ある程度調査内容や判定基準を知っておくことで、適切な第2次調査、もしくは再調査を依頼することができます。

第2次調査の判定基準は非常に複雑です。逆に第1次調査はざっくりとしています。大規模な自然災害はそう頻繁に発生するものではありません。経験の浅さから調査にミスがないとは言い切れないでしょう。判定内容に疑問を感じたら、市役所や場合によっては水害に詳しい弁護士さんに相談するのもひとつの手だと思います。


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