床上浸水後はどうすれば良い?清掃や片付け前の注意点、修理の依頼は?
『令和2年7月豪雨』による大規模な洪水によって、床上浸水を経験しました。
ぐちゃぐちゃになった家屋をこれからどうしていくのか、当時の対応をまとめています。
『令和2年7月豪雨』の被害状況はこちら。
この記事の目次
災害後
災害後は心身ともに疲弊した状態ですが、復興のためにも片付ける前にチェックしておきたい重要なことがあります。
被害状況を撮影する
安全が確保できたら、片付ける前に建物の外観や内観、処分する家財や電化製品などを撮影します。水没した車や、エアコンの室外機や給湯器なども同様です。車のナンバーや電化製品の型番もあわせて撮影すると、各書類の申請もやりやすくなります。
また、水を吸った木材や圧縮材が膨張したり、乾燥で変形したり、日ごとに破損する箇所が増えていきます。木製のドアは変形によって開閉が難しくなるため、早いうちに開けておいた方が良いです。撮影は遠景・近景・3方向など、同じ箇所でも複数枚の撮影が好ましいとされています。
特に、浸水した高さのわかる写真は必須と言っても良いでしょう。浸水被害では浸水深によって被害状況が判断され、各種保険や市の見舞金、国の補助内容などが決められることがあります。片付ける前にしっかりと被害の状況を保存しておきましょう。
ただし、無理して災害時に撮影をするのは危険です。水位が下がったあとも、床上浸水の場合には壁などに浸水のあとがしばらく残るため、安全が十分に確保できてから落ち着いて撮影しましょう。
り災証明書/被災証明書を申請する
り災証明書/被災証明書は、「災害救助法の応急修理」や「被災者生活再建支援法」、各種保険の申請の際に必要とされることがあります。
り災証明書/被災証明書、復興支援の詳細についてはこちら。
り災証明書の申請を行うと現地調査が行われます。「り災証明書の申請 → 現地調査 → り災証明書の発行 → 応急修理や被災者生活再建支援法の申請」という流れです。
り災証明書の申請をしない限り、各種手続きが滞ってしまいます。心身ともに疲弊された状態ではあると思いますが、早めに市に申請されることをおすすめします。
「「り災証明」「被災証明」の発行について / 大牟田市ホームページ」には、り災証明書の申請に必要な書類に「※写真の添付が可能ならば添付をお願いします(必須ではありません)」と書かれていますが、浸水被害は外観では被害状況を確認するのが難しいものです。
現地調査の方も床上浸水の高さをチェックされていましたので、水が引いて落ち着きましたら、メジャーと一緒に浸水度合いのわかる写真を必ず撮影しておきましょう。申請時には必須ではありませんが、現地調査や被害状況の証明には大切です。
他にも、【木造・プレハブ】戸建ての1~2階建ての被害認定において、第2次調査が行われる場合、「屋根」「柱(又は耐力壁)」「床(階段を含む。)」「外壁」「内壁」「天井」「建具」「基礎」「設備」の部位による判定が行われます(災害に係る住家の被害認定基準運用指針【令和2年3月】[PDF])。少しでも被害が見られる箇所は細かく写真に収めておきましょう。
また、自治体によっては申請内容や必要書類が異なる場合もありますので、事前に確認をお願いします。
災害後の後片付け
被害状況を撮影したら、清掃や災害ゴミの片付けです。泥が乾いてしまう前に水で流したり、水没した家具や家電を運んだりしなければいけません。
何から手をつけたら良いか……。現実を受け入れるのもつらい状況ですが、少しずつ進めていきましょう。
清掃時の服装
- 帽子/タオル or ヘルメット
- 帽子やタオルは日差しを防いだり、額の汗を吸収したりしてくれるので屋外の作業では重宝します。損壊の激しい場所や床下の掃除にはヘルメットを着用しましょう。床下などの暗い場所では、ヘルメットにヘッドライトをつけると便利です。
- マスク・ゴーグル
- 乾燥した汚泥の土埃が目や口に入ることで、結膜炎や肺炎を起こすことがあります。特に、薬品を扱う場合には、ゴーグルで目を保護しましょう。コロナ禍でマスクをつけている方がほとんどでしたが、目の保護も忘れずに。
また、マスクは花粉や風邪予防のものではなく、より細かい粉塵(ふんじん)を防げる防塵マスクが適しています。 - 長袖・長ズボン
- 肌の露出を避けるため長袖・長ズボンが基本です。ヤッケはレインウェアとは違って防水性はありませんが、撥水性があり、水に強く、比較的動きやすい材質です。レインウェアに比べて通気性にも優れるので、サウナスーツのようにはなりません。水回りや泥出しなどの清掃作業には適した服装だと思います。
- ゴム製の軍手(布製の軍手+ゴム手袋)
- 浸水した水、残った汚泥には下水も含まれていて多くの雑菌が付着しています。清掃の際は、必ず軍手をつけて作業しましょう。「ちょっとの傷くらい」と思うかもしれませんが、破傷風(※1)や化膿のリスクを避けるため必要です。
浸水時の清掃は、布軍手だとすぐにびしょびしょになってしまいます。ゴム製の軍手、もしくは布製の軍手の上にゴム手袋を重ねてつけるとグリップ力も上がり、摩耗にも強くなります。ゴム手袋は薄手のものは破れてしまうので、厚手のものを。布軍手に重ねることでベタベタしにくく、かゆみやかぶれの予防にもなります。 - 長靴
- 水害のあとは水を含んだ泥や、水浸しになった床などを清掃するため、長靴は必須です。災害ゴミの仮置場も公園などが多く、雨が続いて地面がぬかるんでいることもありました。運動靴だとすぐに泥だらけです。
また、釘などの踏み抜き防止のため、鉄板入りがベストです。踏み抜き防止用のインソールも販売されています。 - ウエストポーチ
- 必要なものをサッと取り出せるウエストポーチは、作業中も身につけられるので最適です。
※1破傷風は、破傷風菌により発生し、かかった場合に亡くなる割合が非常に高い病気です。以前は新生児の発生もみられましたが、近年は30歳以上の成人を中心に患者が発生しています。
主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用します。口が開き難い、顎が疲れるといった症状に始まり、歩行や排尿・排便の 障害などを経て、最後には全身の筋肉が固くなって体を弓のように反り返らせたり、息ができなくなったりし、亡くなることもあります。
雑菌だけでなく、釘やガラスなどが散乱していることもあります。傷口と雑菌との接触は、破傷風や化膿のリスクを高めます。浸水時もそうですが、清掃の際も衛生面に十分に注意しましょう。
清掃時に必要なものはホームセンターやWORKMANなどが品揃えも豊富でおすすめです。
熱中症対策
炎天下での片付け作業は熱中症にも注意が必要です。
- 水分
- のどが乾いていなくても、こまめな水分補給を。腰に下げられる水筒や、ペットボトル収納があるとすぐに取り出せて便利です。
複数で作業する場合、ペットボトルは誰のものかわかるようにキャップなどに印をつけておくと良いでしょう。 - 梅干しや塩飴などの塩分
- 汗で失われるのは水分だけではありません。熱中症の予防には水分だけでなく、塩分も忘れずに。ただし、高血圧や糖尿病などの持病のお持ちの方は、塩分やスポーツドリンクの糖分の摂取に注意が必要です。
- 保冷剤を入れたタオル
- 首周りには大きな動脈が通っているため、首に巻いて冷やすと効果的です。汗拭きにはもちろん、日焼けの防止にも。
- 日除けの帽子
- 直射日光から頭皮を守り、体温の上昇を緩和します。
汗にはナトリウムが含まれています。大量に汗をかいてナトリウムが失われたとき、水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まり、これ以上ナトリウム濃度を下げないために水を飲む気持ちがなくなります。同時に余分な水分を尿として排泄します。これが自発的脱水症と呼ばれるものです。この状態になると汗をかく前の体液の量を回復できなくなり、運動能力が低下し、体温が上昇して、熱中症の原因となります。
マスクをしていると体温の調整がうまくいきません。呼吸も苦しく、体温も上昇しやすい状況での作業です。コロナ対策もあって、みんなマスクをして作業をしていましたが、予想以上のつらさでした。
人との距離をとり、マスクを外して休憩するなど、普段よりも熱中症に気をつけながら作業をしましょう。
害虫対策
不衛生な現場や水災のあとは、コバエや蚊が発生しやすい状態です。蚊はさまざまな感染症を媒介することもあります。
蚊は水たまりから発生するため、水災のあとに発生しやすい害虫です。
肌に直接つけるタイプの虫除けスプレーは、汗で流れてしまいます。室外での作業は庭先などで使えるタイプのスプレーがおすすめです。使用したあとは、直射日光の当たらないような冷暗所で保管してください。
作業や換気のために、ドアや窓を開けっ放しにしていると室内にも蚊が入ってきますが、『蚊がいなくなるスプレー』の効果は抜群!水災だけでなく、夏場には重宝する1本です。
コバエがいなくなるスプレーも存在しますが、効き目はまちまちのようです。コバエには数多くの種類が存在します。なかには効き目のない種類もいるため、レビューでも意見が割れているものが多かったです。
スプレーで予防や駆除をするよりも、清掃と乾燥で発生源を抑えるのが得策かもしれません。
殺虫成分に注意!
上記のように殺虫成分が気化して拡散されるタイプのスプレーは、観賞魚や昆虫、爬虫類などに影響を及ぼす可能性があります。使用法を守れば人体に無害とされていますが、蚊やコバエにのみ効き目があるとは限りません。つらい時期にペットにまで悪影響のないように、使用上の注意をよくご覧のうえ、ご利用ください。
泥出しの道具
泥出し用に先が四角になった「角スコップ」が便利です。一輪車に泥を積み、土のう袋に入れます。
底のぬけたペール缶やバケツを土のう袋に入れて固定すると、泥を入れる作業がはかどります。6~8割程度の土を移したら、ペール缶を引き抜き、しっかり紐で口を縛りましょう。
災害ゴミの処分について
災害廃棄物の処理については市が指定する災害廃棄物の仮置場が開設されます。
ただ、大牟田市では7日以降も豪雨が降ることがあり、天候によって災害ゴミの受け付けが中止になったり、受け入れ容量を超えて場所が追加・変更されることがありました。
また、災害ゴミの処理のため、燃えるゴミの回収が中止になるなど、普段とはゴミ捨てのスケジュールが異なることが多かったです。浸水被害では多くのゴミがでますので、ゴミの分別やゴミの捨て場所、日程などを確認しながら処分しましょう。
重い荷物に気をつけて!
水を吸った畳や大きな家具・家電は無理に運ぼうとすると危険です。人手が足りない場合には、ボランティアの方に協力をお願いしてみましょう。災害ボランティアセンター開設について / 大牟田市ホームページ
炊き出しと飲料水の供給
災害時は水回りが使えなくなったり、冷蔵庫が水没して使えなくなったりして、お水や食事をとるのも大変です。また、車が水没してしまうと買い出しにいくのもひと苦労。近くのコンビニも被災していたり、一時的に需要が増えて品薄になったり……。
親戚のみなさんに助けていただき、なんとか後片付けができましたが、ひとりだと思うと先が見えない作業です。
水災直後は食欲もありませんでしたが、少しでも食べて、こまめに水分補給をしないと体調を崩してしまいます。
『災害救助法の概要[PDF]』にあるように、災害救助法が適用されると、災害から7日以内は学校や公民館などで飲料水の配布や、炊き出しが行われます。無理せず支援を頼りましょう。
屋内の対応・修理
浸水被害では床下や壁のなかなど、外観ではわからない場所が損傷します。放置するとカビや腐朽による被害が広がってしまうことがあります。
浸水した床下
水が引いたあとも、自宅の床下はまさに池。片付けとあわせて床下の復旧作業も必要です。
床下の排水作業
ベタ基礎と呼ばれる床下がコンクリートで囲まれた家屋では、基本的に自然排水ができません。本来、床下に水が入ってくる構造ではないからです。
しかし、浸水が通気口の高さを超えると、床下に水が入り込んできてしまいます。水を抜かないことには床下から湿気が上がり、衛生面でも良くありませんし、消毒もできません。
最初は1畳分の床板を剥がして「バケツで水をすくっては外に排出」という作業を繰り返していました。途中から、ハウスメーカーさんに業務用の水中ポンプをお借りできたので、ある程度までは早かったです。
ただ、水たまりのような状態まで水かさが減るとポンプが使えません。床下の水をひたすらチリトリですくって、たらいに移し、いっぱいになったら外に出すという作業を繰り返しました。
すくいきれないような状態でも時間が経つと、水がゆっくりとへこみのある箇所へ溜まってくるため、この作業だけで数日かかりました。
床下の泥出し
大牟田の浸水のほとんどは内水氾濫によるもので川が氾濫したり、決壊したりしたものによる外水氾濫ではありません。そのため、自宅の泥の蓄積は少なかったのですが、これが川の氾濫や決壊になると、一緒にドロドロになったヘドロが床下に残ります。
泥出し作業は、乾燥すると泥が固まって、より重労働になってしまうため、やわらかいうちに除去しておきたい作業です。
しかし、水を含んだ泥ってめっっちゃくちゃ重いです。さらに、足場はぬかるんで力が入りません。人吉市の球磨川で決壊・氾濫がありましたが、被災された家屋の映像をみると言葉がでません。
とてもじゃないですが、ひとりの力では途方もなく、先が見えない状態だと思います。ボランティアのみなさんには本当に頭がさがる思いです。
床下の乾燥
床下の水や泥を除去したあとは、何より乾燥が必要です。床や壁を張り替えるにしても、十分に乾燥した状態でないと細菌やカビの温床となるからです。
床の根太や壁の胴縁等の下地木材については、含水率が20%以下(公共建築物工事標準仕様書より)に下がった時点が乾燥の目安となります。
浸水した住宅のカビ対策について – 長野市ホームページ(リンク切れ)
乾燥状態を数値で確認できるとわかりやすいですね。乾燥が不十分な状態で修理をしてしまうと、カビや腐朽の原因となります。
1日でも早く修理を始めたくなりますが、まずはサーキュレーターや扇風機を回し続け、とにかく乾燥を促しましょう。そのうえで修理業者の方に乾燥状態を確認し、畳や床の張り替えを行なうことをおすすめします。
サーキュレーターはさまざまなタイプのものがありますが、扇風機と違って直線的な強い風を起こし、部屋の空気を循環させるものです。乾燥を促すならサーキュレーターの方が断然効果があります。
また、サーキュレーターは換気はもちろん、エアコンの風を効率よく循環させたり、洗濯物を乾燥させたりするなど、普段使いでも大活躍です。
災害から3日ほどで、床下の水はほとんど排出した状態でした。しかし、水災後も雨の日や曇り空が続き、「乾燥してきたかな」というところまで、3週間ほどかかっています(木材はまだ乾燥しきっていませんでした)。
この間に片付けをしたり、清掃をしたり、各種手続きをしたり……大変です。
床下の消毒について
大牟田市では浸水家屋および家屋周りの消毒を無料で受け付けていました。床下の消毒は汚れが残っていたり、濡れたりしている状態では効果が得られません。清掃と乾燥が済んだあとに消毒が行われます。
追記
水災時の「浸水した家屋の消毒について」のページは削除され、2021年8月19日に新しく更新されていました(浸水した家屋の消毒について / 大牟田市ホームページ)。現在は“浸水した家屋を消毒する場合の消毒機材の貸し出し等については、町内公民館単位でご相談を受付しています。”とのことです。
消毒をお願いしてみた
床下の消毒液は、逆性石けんを希釈したものを使用し、散布機を使って行われました。
- 畳の床板を取り外した1畳分(写真の濡れているあたり)
- 床下収納部分(1m2ほど)
床下の消毒は以上です。
(意味ねぇ・・・)
正直そう思ってしまいました。消毒されている方からも「(これ意味ないよな)」という雰囲気が感じとれたので、逆に気の毒に思うほどでした(屋外の家屋周りはしっかりと消毒していただきました)。
床下の消毒は不要!?
「床下の消毒はこれで大丈夫なのか、いや大丈夫じゃないよな……」という思いで調べていると「床下の消毒は不要」という情報がありました。
床下の消毒、いりません――。県や公衆衛生の専門家が、呼びかけている。水害後の片付けは、汚泥との闘いが中心だ。きれいにするために、なにもかも消毒したくなるが、床下や庭土などへの消毒は原則不要。専門家は「過剰な消毒にかける手間をはぶき、他の作業に時間を活用してください」と話す。
浸水後の床下消毒、「不要」と専門家 扱いづらさ懸念も:朝日新聞デジタル(リンク切れ)
消石灰について、科学的に、どの程度の量をまけば殺菌効果があるのかは、実証されていない。
プロの「消石灰のまき方」!知っていると知らないでは大違い! – Yahoo!ライフマガジン(リンク切れ)
浸水した家屋を清掃される方へ
感染症予防のためには清掃と乾燥が最も重要です
屋外(※特に床下や庭など)では消毒は原則不要です
意味n・・・
床下消毒は市の判断?
実は水災時の床下の消毒に関しては、市によっても対応がわかれています。厚生労働省と同じく「床下や庭などの消毒は原則不要です」と記載されている市もありますが、大牟田市や久留米市のように消毒を行うことも少なくありません。
また、消毒方法についても過去の水害では消石灰が使われるなど、対応も異なっています(佐久市の消石灰を使った消毒 – 2019年台風19号)。
消石灰は取り扱いが難しいことや、消毒効果の疑問から、現在では主流ではないようです。
災害の規模や状況、また家屋のつくりも異なるため、判断が難しいのかもしれません。
保健衛生課に問い合わせてみた
「知らずに労力を割いてしまっているのではないか」という懸念があったため、大牟田市の保健衛生課に問い合わせをしてみました。
すると、「床下や庭などの消毒は原則不要」と厚生労働省が提示していることに関して、当然ではありますがご存知でした。
被災者の方から「床下の消毒をしてほしい」「届く範囲でも構わないので消毒をお願いしたい」という問い合わせが数多く寄せられていたそうです。屋外や床下への消毒が、実際は効果が薄いものだとしても、被災者の心のケアとしての役割を担っているのだと思います。
また、消毒液についてですが、塩化ベンザルコニウム液(逆性石けん)は大腸菌に有効だということです。
『カビ – 厚生労働省[PDF]』では、塩化ベンザルコニウム液(逆性石けん)が「カビが生えた場所の消毒に有効」とありますが「何より乾燥を優先してください」とのことでした。「カビ駆除の基本4カ条の④」にもあるように、消毒しても乾燥させないとすぐにカビができるそうです。
「浸水した家屋の消毒について / 大牟田市ホームページ(リンク切れ)」には「浸水家屋の床下及び家屋周りを中心に消毒液を散布します。」としか書かれていなかったので、床下全部を消毒してもらえると考える方もいらっしゃると思います。素人からすると、どのような方法で消毒するのかわからないからです。
しかし、大牟田市の消毒の場合、基礎がコンクリートで囲まれたベタ基礎などは、床板を剥がさなければ点検口や床下収納などの限られた範囲でしか消毒液が散布されません。そうなると「手抜き」と感じてしまい、苦情に繋がる可能性があります。
災害時には、被災者はもちろん、役所の方も対応に追われて疲弊しきっているはずです。市民の声に耳を傾けてくれたにも関わらず、不要な齟齬が生まれるのは悲しいことだと思います。
追記
問い合わせの翌日、「浸水した家屋の消毒について / 大牟田市ホームページ(リンク切れ)」に「可能な範囲での対応となります。」という文言が追加されました。丁寧に受け答えしてくださり、ありがとうございました。
浸水した床
今のところ、フローリングのコーティングの剥離は見られますが、反り返りなどは見られません。コーティングによって水はけが良かったのかもしれません。
ただ、「Q00038:床上浸水を想定する必要があります」によると「表層は問題無くても、内部(フローリング材のさらに下)がグズグズになってくる可能性が高くなります。」とのこと。
修理費用をできるだけ抑えたい気持ちと、外観にはさほど問題なさそうに思えることが判断を迷わせます。
床の断熱材
床板を剥がさなくても、点検口や床下収納から床下の状態をある程度調べることができます。グラスウールのような繊維系の断熱材は、水を吸うと乾燥しきれないため、交換が必要です。
自宅は「ポリスチレンフォーム」という発泡プラスチック系の断熱材が使用されていました。状態によっては消毒して乾燥すれば、そのまま利用できるようです。
工事が始まってからわかったことですが、一部で断熱材と床板との間にカビが生えていました……。リビングの方は、まだ床を剥いでいませんが、同じような状態でしょう。
やはり、張り替えるのが無難のようです。写真は浸水から1ヶ月弱は経過したものですので、早急に床を剥がした場合には利用できた可能性もあります。
床の消毒
大前提として消毒をするには、汚泥の除去や清掃、十分な乾燥が必要不可欠です。
床下や屋外の消毒は原則不要とされていますが、床より上は生活のなかでも肌に触れることが多い部分です。被害にあった自宅で過ごす場合は、修理が始まるまで時間がかかることがあります。感染症予防のためにも、清掃と乾燥をしっかりして消毒を行いましょう。
消毒薬の種類
厚生労働省が提示している消毒薬は「次亜塩素酸ナトリウム」「消毒用アルコール」「塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)」の3つです(浸水した家屋の感染症対策[PDF])。
次亜塩素酸ナトリウムは、ひどい汚染状況、長時間の浸水などの場合に使用します。「ハイター」や「ブリーチ」などの家庭用塩素系漂白剤で代用可能です。
色あせや腐食などにより次亜塩素酸ナトリウムが使用できない場合は、消毒用アルコール、塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)を使いましょう。消毒用アルコール、塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)は薬店等で販売されています。
消毒液のつくり方
- 食器類・流し台・浴槽は0.02%に希釈
- 水3リットルにハイター/キッチンハイターをキャップ約1/2杯(12ml)
- 家具類・床は0.1%に希釈
- 水1リットルにハイター/キッチンハイターをキャップ約0.8杯(20ml)
ハイター/キッチンハイターを例に、購入から3ヶ月以内を想定したものです。次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を使った消毒薬は、消毒対象や保持期間によって希釈方法が異なります。
「ハイター」と「キッチンハイター」は、次亜塩素酸ナトリウム濃度が6%になるように生産されています。
通常、塩素系漂白剤の主成分である次亜塩素酸ナトリウムは、常温で保管されていてもゆっくりと分解し、濃度が低下していきます。特に、直射日光のあたる場所や高温での保管では分解が進むことが、一般的に知られています。なお、ご購入から3年以上経過した古い製品では、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が著しく低下している場合がありますので、ご使用はおすすめできません。
使用時は「十分な換気」「家事用手袋の着用」「他の薬品と混ぜない」などの注意が必要です。そのほか商品パッケージやHPの説明を必ず確認して使用してください。
参考:浸水した家屋の感染症対策[PDF]
参考:新型コロナウイルス対策ポスター「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」[PDF]
浸水した壁
「床上浸水の修理費用がなぜ高額になるのか」、それは壁の断熱材の存在のせいでしょう。壁内部にある断熱材が浸水によって吸水し、カビが生える原因になるのです。
ユニットバスやシステムキッチン、洗面化粧台などは壁の断熱材を除去するには壁から外さなければいけません。
一度外したものは再度つけ直すのは難しく、結局は買い換えが必要になってしまいます。
(本当にこれ、どうにかならないんでしょうかね……。)
壁の断熱材
自宅の壁の断熱材は、ロックウールという繊維系の断熱材が使用されていました。断熱材はビニールで囲まれていますが、1ヶ月近く経った時点でも、ビニールの内部に水が溜まっているのがわかります。
近所の方は「床上50cm程度だったが、2階付近まで断熱材が水を吸い上げていた」という話も。心配していましたが、ちょうど浸水した高さほどで断熱材の吸水は止まっていたので、胸をなでおろす思いでした。床上1mほどから断熱材や石膏ボードの除去など、壁の工事を行います。
少しでも床上浸水が想定出来る場所ではセルローズファイバーは避けた方が良いでしょう。古紙を原材料としていることから、浸水には極端に弱いと言わざるを得ません。床上50cm程度の浸水でも、壁内の全交換などという大規模なリフォームが必要になります。
断熱材の種類や建築構造によっては、断熱材が水を吸い上げ、工事の規模が大きくなります。床上浸水が確認できた時間は、6日の夕方ごろから始まり、深夜をピークに翌日の10時ごろまで。その後は避難しましたが、豪雨が続いていたため再度床上浸水していると思います。
床上浸水の時間が長ければ、断熱材がもっと吸水していたかもしれません。床上浸水した場合は、早めに壁の断熱材の確認・除去をされることをおすすめします。
修理の見積もり・依頼
何十年と経った家であれば取り壊しという選択もありますが、築年数が10年程度では修理するケースが多いと思います。しかし、大規模な災害が起きると、業者さんの手が足りなくなることも。
修理には十分な乾燥をしなければいけませんので、しばらくは乾燥させつつ見積もりを待つ状態が続きます。
3週間経った時点では相見積もりが出ておらず、修理に取り掛かれていませんでした。こればかりは人手の問題もありますし、仕方がないことですね。
この間に各種申請の手続きなどを行いました。また、水没してしまったバイクや車があれば、災害ゴミの運搬や修理業者さんの駐車スペースを確保するためにも、廃車手続きを早めに済ませておくことをおすすめします。
水没したバイク・車の処理についてはこちら。
ハウスメーカーさんの話では、大規模な災害が起こった場合、地元の工務店/建設会社さんに依頼した方が見積もりや修理開始が早い場合があるとのこと。九州各地で災害が起きていますので、ハウスメーカーさんも対応に追われているのだと思います。
ただ、地元の工務店/建設会社さんも、同じく地元の修理・解体で手がまわらない場合もあります。少し手を広げて、隣接する市内あたりの工務店/建設会社さんにも相談されてみてはいかがでしょうか。
修理やリフォームの相場をみるためには相見積もりをすることが大切です。必ずしも費用が安ければ良いというわけでもありませんが、複数の見積もりがあった方が検討しやすいと思います。
しかし、探す時間がなかったり、どこに頼めば良いがわからなかったりすることもありますよね。そういった場合には、一括見積もりサービスを利用する選択肢もあります。
「リショップナビ」では、全国の厳しい審査を通過したリフォーム会社のなかから、地域や要望にあった最大5社を無料で見積もり。リフォーム事例も写真・費用・施工日数付きで豊富に紹介されています。専門のリフォームアドバイザーに電話ですぐに相談できるのも心強いです。
住宅の応急修理について
住宅の応急修理は、り災証明書の被害認定内容によって申請するものですが、り災証明書の発行には時間がかかります。
そのため、今回は修理を始める前に建築会社さんとともに市役所で仮申請し、り災証明書が発行されてから正式に申請する流れとなりました。
住宅の応急修理が適用できる範囲は制限されていますので、建築会社さんにも事前に話をしておきましょう。
床板・断熱材の取り外し
大牟田市に隣接する荒尾市内の建設会社さんにお願いしたところ、1週間ほどで仮見積もりを出していただき、数日で作業に取り掛かれるとのこと。
とりあえず床板や壁の断熱材の除去からお願いし、7月6日の災害から1ヶ月近く経った8月3日に着工です。これでもかなり早い方だと思います。
キッチンやトイレ、ユニットバスなどはタイプを選ばなければいけませんし、施工から取り寄せの間にメーカーさんがお盆休みに入ってしまうため、お盆明けからの作業予定となりました。
被災から3ヶ月が経ちますが、まだ修理は完了していません……。床の張り替えと、壁の石膏ボードの取り替えがやっと終わったところです。大規模な災害で人手が足りていないためか、床の張り替えは一人の大工さんに任されていることもありました。
また、お盆休みを挾んだことや、9月に台風が接近し中断、祝日も多かったことで長引いているように思います。床下は再度清掃と消毒を行い、防蟻処理を依頼したため、乾燥にも日数がかかりました。
1ヶ月もすれば、災害のニュースは全国的に頻度も減っていきます。被災した経験がなく、現地を知らなければ「1ヶ月もすれば落ち着くのかな」と考えてしまうかもしれません。しかし、もとの生活を取り戻すためには数ヶ月、規模によっては数年とかかるんだな、と自然災害の驚異を実感しています。
さいごに
床上浸水後は「申請書類の作成や清掃・片付け、修理の依頼」など、やることがたくさんあります。急に切り替えることは難しいですが、できるだけ早くもとの生活を取り戻すためにも、少しずつ進めていきましょう。特に「り災証明書の申請」は復興支援と密接にかかわっているものです。
り災証明書の損害判定に応じて、住宅の修理費用が支援される「住宅の応急修理」や、支援金が支給される「被災者生活再建支援法」などの復興支援があります。片付けを始める前に被災状況を撮影し、忘れずにり災証明書の申請をしておきましょう。
り災証明書/被災証明書、復興支援の詳細についてはこちら。